高機能換気を本気で進めて、日本の感染症対策を側面から変えたいと思います

環境省が補助金を打ち出した高機能換気について、先日、あるサブコンメーカーの方から、今後の課題についてお話を承りました。

通常、空調は、部屋内の空気と外気との間で熱交換を行う仕組みとなっていて、夏場であれば室外機から外に熱だけが放出されます。空調機器は基本、熱交換であり、換気は担いません。空調は「換気」ではありません。
ウイルスは空気中では非活性状態にあり、増殖はしません。生物の体内に入っている間だけ増殖します。ウイルスがヒトの体内で増殖し始めると、次々に体内からウイルスが室内の空気に放出され、室内のウイルス濃度はどんどん高まります。外気を取り入れ、室内のウイルス濃度を抑える機能が「換気」の役割です。

したがって、効果的な感染症対策には、ソーシャル・ディスタンスや消毒と並んで、「換気」が不可欠です。

高機能換気とは、換気できる空気量が大量であるだけでなく、室内の温度をあまり変えずに外気を取り入れることを可能にするものです。
換気機器は、排出する室内空気と、取り入れる外気との間で熱交換を行います。この熱交換のお蔭で、室内温度の変化を抑えながら換気を進められる仕組みとなっています。

伺ったご説明をもとに、私が今後の課題として理解した内容は、次の五点です。

一点目、助成事業の対象者の範囲です。
店舗や事務所の運営者だけでなく、テナント店舗の貸主やビル保有者などを助成対象者に加えることが肝要です。
テナントビル内の店舗に設置する際には、壁に新たに穴を開ける必要があり、工事には家主の許可が必要となります。
店舗経営者への補助だけでなく、家主への補助も可能となれば、当然、許可も得る手間も解消されます。
また、ビル全体を一挙に高機能換気化する工事も可能になります。一挙に工事を行えば、個々の店舗ごと足場を組み直す必要がなくなり、費用も浮きます。
ビル全体で工事すれば、ビル自体の付加価値が高まりますので、歓迎されやすいものと考えます。
家主が取り組む場合には、テナントが撤退する場合の原状復帰義務もありません。この点でも、高機能換気の導入のハードルが下がります。
こうした点を、わが党の国会議員い繋げ、今後の環境省による助成制度の設計に生かせればと考えます。

二点目は、現行機器におけるウイルスの除去の効率です。
外気と室内空気との間で熱交換を行いながら換気する際には、残念ながら、熱と一緒にウイルスも移動する可能性を否定できません。
外気と内気とを隔てるフィルターの目を通し、湿り気を帯びた浮遊物などに付着したウイルスが移動してしまうのです。
当然、内気より外気の方が、ウイルス濃度が低いことが前提です。この前提の上に、室内のウイルスをどのくらい残留させずに換気を行えるのか、これがウイルス除去率です。
当然、フィルターの目をより緻密なものにすれ除去率は高まります。
事実、感染症対策機器として病院内などに設置される陰圧装置内のフィルターは、ウイルスが付着する0.1ミクロン程度の大きさの異物も殆どキャッんチできます。
しかし、これほどまでに緻密なフィルターを使うと、通常の風力では換気が進みません。また、それを補うべく風力を強めれば、電気代は嵩みます、
この点のバランスをベスト・マッチなものとしてユーザーに提示することが、「高換気」の分かれ目となります。新型コロナウイルス感染症の登場に見合った新たな機器の開発も期待したいところでありますが、これからの開発では、おそらく今年の6月以降の取組には間に合いません。
当面は今ある機器で「換気」に取り組むことになります。現行機器のウイルス除去率と消費電力、この点の数値を公表し、ユーザーの理解を得る必要があります。
どこら辺がベスト・マッチなのか、ユーザーにとって分かりやすく、納得を呼ぶデータ公表を行えれば、新しい生活様式に見合った「換気」の導入が進むものと思います。

三点目は、高機能換気の必要性と効果を分かりやすく発信する行政側の工夫です。
ソーシャル・ディスタンスなどは2mの確保など分かりやすく発信されています。
高機能換気についても、ウイルス除去率に加えて、何か効果的なアピールの仕方、新たなキーワードの提示などの工夫が必要です。
換気能力は、時間当たりの換気空気量(㎥/h)で表現されます。この㎥/hに加えて、室内空間の大きさも加味して考える必要があります。パーセンテージなどを加味して、求められる換気能力を数値化する必要があります。
この数値を基準として目安化し、クリアした機器に「高機能」のステッカーを貼れるなどの簡明化が必要だと思います。

四点目は、機器導入に際しては、専門家の助言をセットにして提供する必要があります。
「換気」では、当然、室内の空気の流れを考慮に入れる必要があります。機器の設置場所をどうするのか、室内の什器類の配置をどうするのかといった点です。
感染症に立ち向かう店や事業所の意気込みを利用客は見ているのですから、その判断、調整をすべて販売会社に任せているような漫然とした姿勢では、客足は伸びません。
導入に際しては、客観的な助言を得ながら、ユーザー自身としても判断が可能で、納得できるような工夫が必要です。
幸いこうした課題には、大学や研究機関、大手空調メーカーなどからなる「空気調和・衛生工学会」などが、先行的に取り組んでいます。換気アドバイザー的な役割を果たして頂ける可能性があります。
行政が一足飛びに専門知識を身に付けるのは難しい業でありますので、民間の専門家団体の活用を図るべきです。民間の専門家団体によるガイドラインの提示やオーソライズがあれば、ユーザー側も、販売側も、安心して設置現場に応じた工夫に臨めるものと考えます。

五点目は、やや将来的な課題になりますが、優れた喚起効果を備えた建物をどう認証するのかという点です。
これからは、耐火性、耐震性、耐浸水性と並んで、耐感染症性ともいうべき、「換気」能力を、建物ごとに評価し、認証していく必要があるものと考えます。
幸い環境貢献という点では、建物について、すでに省エネや環境性能などに関する指標のもと都としても建造物の評価制度を整えています。これに倣って、換気性能などに関する新たな建物評価の仕組みを整えるべきと考えます。

以上、かなり長文になりましたが、私見としての拙考を申し上げました。
感染症の流行に備えた医療体制などの整備と併せて、「換気」を含めた三密回避を都内の店舗などで進め、都内の復興を果たしたいと思います。

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