都の入札契約制度改革が見直されます(平成30年第一回定例会の都議会公明党の代表質問)
2018/3/2
本日の平成30年東京都議会第一回定例会の本会議の都議会公明党の代表質問に対する小池知事答弁で、都が昨年から打ち出し、試行的に実施してきた入札契約制度改革の内、業界団体などの関係者からわが党に見直しを求める強い要望が寄せられていた点に関し、公明党提案を受け見直す方向が、はじめて示されました。
ひとつは、予定価格の公表です。
都の施行的に進めてきた入札契約制度改革では、すべての契約案件の予定価格を従前の事前公表から事後公表に変更するとされていました。しかし、今回、公明党は、事後公表は財務局が発注元となるような高額の契約に限り、事業局が発注元となるような中小規模の契約案件は、事前公表に改めるよう求めました。これに対し、小池知事は、公明党が受け止めているような声が知事のもとにも届いていることを認めた上で、「こうした現場の声を受け止めながら。入札監視委員会での検証を進め、提案をしっかり受け止め、より良い制度の構築に向けて取り組んでいく」と答弁しました。
予定価格を見積もれる力量をもつ企業は、積算部門に経験豊かな人員を多く配備している企業に限られてしまっており、多くの中小企業は、見積もりを行う社員も現場の工事を行う社員も同じ人物で、昼間の作業を終えたあとで、残業したり、休日に出勤したりして見積もり作業に追われているのが実態です。まさに働き方改革に逆行する状況となっています。
公明党は、昨年の5月にも、「低入札価格調査制度」の適用範囲の基準を、当初、都側が1件当たりの予定価格で、「建築工事」で3.5億円以上、「土木工事」で2.5億円以上、「設備工事」で0.4億円以上としてところを、小規模企業が請け負う契約が殆ど対象となってしまうとの業界団体の声を聴き、「建築工事」で4.4億円未満、「土木工事」で3.5億円未満、「設備工事」で2.5億円以上に変更するようにもとめ、小池知事が急遽、自ら業界団体の意見を聴取する機会を設けた上で、全面的に公明党案を受け入れて変更しています。今回の事業局案件という水準も、わが党としては、「低入札価格調査制度」の適用で改めさせた範囲に変更することを念頭に置いています。
二つめは、一者入札の中止の見直しです。
一者入札とは、1社(者)しか札(請負金額の申出)を入れない契約のことで、昨年の都の試行的改革は、一者入札となった発注はすべて入札を無効とし、入札をやり直すという方法をとっていました。しかし、工事によっては、そもそも、先行工事の経験がないと請け負い難いものであったり、特殊な技術を求められる工事であったり、タイミング的に他に工事を請け負える企業がいなかったりするなどで、止むをえず一者入札となる案件も存在しています。そうした入札を、一者(社)しか入札しなかったことをもって無効としてしまうと、都の工事の完成が遅れたり、入札に向けて努力した企業の労力が無駄になってしまうという弊害があります。
そもそも、入札結果が妥当であるかどうかは、入札に応じた企業数の多寡によって決められるべきではありません。小池知事は、「一者でも参加を希望した事業者の準備が無になることや都の事業執行の遅れを懸念する声が数多く寄せられた」ことを認め、「こうした現場の状況も踏まえ、今後の取扱いについて検討」していく旨を答弁しました。
三つめは、JV結成義務を撤廃の見直しです。
JVとは、一者ではなく、たとえば、大手企業と中小企業といった組み合わせなどで協同して工事を請け負うことで、JVの結成義務とは、JVを組まないと入札に参加できない仕組みを設けるものです。都の昨年からの入札契約制度改革の施行内容では、これを全面的に撤廃していました。しかし、公明党は今回、人材育成の観点から、仮称ですが「担い手育成モデル事業」といったものを設定して、それに指定された契約案件にれに限っては、入札時にJVの結成を義務付けるよう求めました。
これまで都が長年、JV結成義務を課してきた工事は、比較的に高額で、大規模な工事案件が多く、JVに参画した中小企業にとっては、単体では経験できない大規模工事の全容に関わり、工事監理のノウハウを身に付けることができるようになり、人材育成にも大きく役立つ機会となってきました。もちろん、JVの結成義務は乱発されるべきではありません。事実、都が昨年実施した試行的改革でJVの義務化が撤廃されたことにより、これまではJVでしか参画できなかった工事案件に単体で入札したり、落札したりした中小企業も出て来るなど良ぶ声も聞かれていました。しかし、単体で請け負えるような企業は「中小」といっても、かなり実力のある企業に限られるのが実態です。多くの中小企業にとっては、JV義務であってこそ大規模工事に参画できるというのが実態で、結成義務が全契約案件で撤廃されてしまうと、経験を積み、企業規模を伸ばすきっかけをつかめなくなってしまうという弊害があり、見直しを求める声が、都議会公明党に寄せられていました。
今回、小池知事は、「担い手育成モデル事業という提案を頂いたが、今後の検討において、入札参加者数の増加により競争性の確保と合わせ、特に中小企業における人材育成という視点も重要と認識」しているとし、「現在、入札監視委員会での検証を進めているが、引き続き、現場の声をしっかりと聞きながら、より良い制度の構築に向けて取り組んでまいりたい」と答弁しました。
これらの知事答弁は、都民、関係事業者にとって誠に朗報であり、都政が古い体質の政治に戻ることなく、しかも、弊害を是正して前に進んでいく上で、重要な一歩を踏み出したものと言えます。確実に、都議会公明党の提案に沿った改善が実施されるよう、今後の進捗を見届けて参りたいと思います。