知的障害者福祉の様々な課題を承りました~東京施保連
2018/6/23
東京施保連(東京知的障害児・者入所施設保護者会連絡協議会 白土一郎 代表幹事)様の「平成30年度 第一回学習会」(会場:研究社英語センター)に参加し、ご挨拶をさせて頂いた上に、様々な課題を頂戴してまいりました。
たとえば、障害者の高齢化が進んでおり、障害者の入所施設やグループホームなどでも、看取りが課題となっています。講演に立った「社会福祉法人 南風会 かすみの里 施設長」の「山下 望」氏からも、施設内でお亡くなりなれば、前日に診療を受けていても不審死扱いされ、施設職員の全員が休日をとっていた者も呼び出され、事情聴取を受けることなり、改善が望ましいとの旨のご指摘がありました。シンポジウムの発題者の「社会福祉法人 正夢の会 パサージュいなぎ 施設長」の村上心悟氏もご自身の二例の看取り体験をエピソードを交えご紹介くださり、やはり今後の課題と指摘されました。また、同じく発題者の社会福祉法人 豊寿会(最上ふれあい学園)副理事長」の山田桐雄氏は、高齢者福祉の法人の経験を生かした介護福祉士が18名もいる職員体制や協力病院との間で電子カルテの仕組みを講じているなどの点を強調され、あえて「看取りは怖くない」とご発言されていたりしました。
こうしたことから、私も、「看取り」体験をもつ医療関係者や高齢福祉関係者との人事交流やそうした方面からの人材獲得が有効な対策の一つと考えます。また、ご指摘のあった病院との連携の強化を具体的に果たす仕組み、たとえば、電子カルテやカメラ映像を活用した診断や記録管理などの代替的手段などの研究を警察との連携のもと進めることが、急がれると感じた次第です。
このほか、日々深刻化する人材・人手不足、相談支援や看護職配置の加算の不足、待機者の増加への対策、自動車の性能向上を理由とした送迎加算の減算、グループホーム施設でのショートステイ機能の付置による違和感の問題など、数多くの宿題を頂戴したところです。
確かに、送迎加算の減算については、一般的にはハイブリッド車だけでなくガソリン車も燃費が向上するなど、自動車の質の向上によりメンテナンス経費は下がる傾向にあります。しかし、平均的な動向の話と、現に社会福祉法人で使用されている車両の性能の問題とは別の問題であります。また、見慣れない利用者が知的障害者の生活空間に出入りすることを意味する「グループホーム施設でのショートステイ」には、配慮するべき事柄がありそうです。
さらに、現に都の第二回定例会で都条例の新設が審議される障害者差別解消条例に規定される合理的配慮をめぐる議論にもつながるアミューズメント施設での配慮の無さ、グループホームの設置促進の新たなキーワードになりそうな日中サービス支援型グループホームの可能性、強度行動障害への対応、権利擁護、地域社会との共生、医療的ケアの充実など、宿題は多岐にわたることになりました。
日中サービス支援型は10名×ユニットの20名の収容と5名までの短期入所を可能にするもので、しかも大規模減算を伴わないというメリットを持っています。しかし、日中サービスをグループホーム内で行うことに拘り過ぎれば、利用者の気分転換や外出や地域とのふれあいの機会を減らすことにつながる可能性もあり、同一法人などの間で就労継続支援施設などとの連携が日中で認められれば、グループホーム設置促進の大きな推進力に育つとの期待もあるようで、私も今後、国や都の支援の在り方を検討したいと思います。
本日、新たな視座を与えて頂いたと感じるのは、入所施設とグループホームの上手な共存、すみわけ、協調の在り方の問題です。障害者の方に健康寿命の増進に必要な規則正しい生活や周囲の目の存在による不祥事の未然防止の効果を提供するという点では入所施設の方が長けていると思います。一方で、グループホームは自由度が増すという大事なメリットがあります。しかし、施設からグループホームなどへの地域移行を強制的に一定割合で進めるといった方法は、今も将来的にも選択する必要などなく、個々の障害状況の特性に着目して、個人ごとに適切な形態を最初から選ぶ、あるいは、途中で選択しなおすという形が望ましいと考えます。障害者の地域社会への進出を意味するグループホームの質量にわたる充実は大事な課題であり、今後も進捗を目指すべきですが、強制的色合いの強い地域移行、入所施設からの切り離しには、私は賛成できません。
こうした課題に一つ一つ、めどをつけられるよう、しっかりと取り組んでまいります。
写真は講演される山下望さんです。