在宅での看取りに希望を開く取り組みこそ重要!~介護・医療対策本部勉強会(No.3 公明党東京都本部)~ 

本日、公明党東京都の介護・医療対策本部の第三回勉強会が開かれ、医療法人社団つくし会・新田クリニック理事長・院長で東京都在宅療養診療所連絡会会長の新田國夫氏と、高齢者住宅・銀木犀を運営する株式会社シルバーウッド代表取締役の下河原忠道氏がそれぞれとても有益なご講演を行って頂きました。

お二人のお話しで共通していたことは超高齢化社会を踏まえ、在宅での看取り環境を推し進めることが重要という視点であったかと考えます。

新田先生は、2030年以降、年間で死亡する日本人の二人に一人以上が85歳の高齢者になるという推定をデータで示されるとともに、急性期医療の病床数が慢性期医療の病床数を大きく上回っている現状が、高齢化社会の医療ニーズと合わなくなる点が問題であるとされ、在宅での安心できる看取りを可能とするためには、地域の医療機関が専門医ではなく、高齢者に寄り添って伴走するかかりつけ医に転換していく必要があると、医療行政の課題をご指摘して下さいました。

新田先生が示されたデータは国立社会保障・人口問題研究所の金子隆一氏の資料ということで、そのデータによりますと、85歳以上で亡くなる日本人の数は、1940年まではごく少数で、むしろ数としても割合としても最も多いのは15才未満の層で、次いで多いのが15歳~64歳の層でありました。これが、第二次世界大戦後の経済成長とともに医療水準の向上や衛生環境が改善により、まず、15才未満の層の死亡数が急激に減り、1960年代頃からはまず75歳~84歳の層の死亡数が増え、次いで、85歳以上の層の死亡数が急増していく傾向になっています。

新田先生がこのデータの重要視される意味は、医療機関の主な役割が急性期医療資料から慢性期医療へ転換していくことにあるということの重要性であると思います。急性期医療は、治るか治らないか、症状が改善するか改善しないかといった点で、その優劣は客観的に分かりやすいものです。それに対し、患者の自立を助けたり、ターミナルケアを中心としたりする回復期や慢性期医療で求められる点は、人生の幸不幸、満足感という主観的要素の方がウェイトを占めるようになるとも、新田先生は指摘されていました。

一方、下河原社長は、自宅での看取りよりもサービス付き高齢者向け住宅での看取りの方がしやすいという点に着目し、医療や看護などの既存の連携機能を効果的に活用することにより、7割以上の看取り率をサービス付き高齢者向け住宅で実現しています。人工呼吸を使わないなど入居前にご本人やご家族に同意を得ていることが前提となっていますが、下河原社長の強い意思がこれを可能としています。締めくくりの際に解説をしてくださった高木美智代衆議院議員・東京都本部代表代行のお話によると、下河原社長の強い意思は、療養病床での延命措置の状況に疑問を感じ、患者本人にとっての幸せを最優先できる態勢の在り方を目指し、国内や先進国を見て回って得た経験に基づくものだそうです。下河原社長も、今は、大半の高齢者が病院で死を迎えているのに対し、1950年代頃までは、むしろ在宅で死を迎える高齢者の方が多かったというデータを示され、医療が高度化した現在にあっても、その再現は充分可能であると訴えられました。

もし、お二人の講演の内容を踏まえ、今後、在宅や在宅に近い環境での看取りが広まれば、高齢者やその家族にとって、より尊厳を持った、そして、より自分に合った、人生の終え方を選べる選択肢が増えることになります。そして、その副次的な結果として、大半の高齢者が終末を病院で迎える現状の転換を可能とし、医療費の増大を抑える効果も得られることになります。ぜひ、進めて参りたいと思います。

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