公営企業委員会で、工業用水道事業に関するとの廃止方針をめぐって、質疑を行いました

本日、都議会の公営企業委員会で質問に立ち、有識者委員会からの報告書が、委員会の報告事項になっている「今後の工業用水道事業」について質疑しました。


工業用水道とは、塩素処理などの最終段階の浄化処理を行わない、飲料には適さない水で、飲料水よりも単価が安く、企業活動用に配水されているものです。
全国的には。工場団地などに供与されていますが、東京をはじめ大都市圏では、高度経済成長期の活発で密度の高い企業活動により、急激に進んでいた地盤沈下を回避するために使用開始されていたものです。なぜ、企業活動が地盤沈下につながるのかといえば、当時、東京に立地していた企業の多くが費用の掛からない地下水を大量に組み上げて使用していたからです。
都内では、経済活動の鎮静化や工場の都外移転、節水型機器の進展などにより、昭和40年代の後半から50年代の前半をピークに工業用水の使用が減少しはじめ、現在では件数で3分の1、水量で17分の1に減少しています。それでも、鍍金や皮革加工、化学、食品、窯業などの企業が今も使用しており、生産を支える大事なインフラとなっています。
最大の問題は、管路の老朽化で、耐震化への対応を含め、継続的使用を図るための管路更新を行うか否かの判断を行うべき重大な分岐点に差し掛かっています。企業の活動を支援する狙いからは工業用水の継続を図った方が良いのですが、水道事業は使用者が支払う料金によって賄う独立採算制であることが法定的に求められており、本格的に管路更新を行うとなれば、飲料水よりも高い価格設定とするか、一般都民の水道料金の値上げを検討することになります。
都はここ10年ほどこの問題に直面してきましたが、結果的には判断を先送りしてきました。しかし、小池知事は、わが党の求めなどに応じて、決着をつけるべく、有識者委員会に諮問を図り、この度、その有識者委員会から廃止を妥当とする旨の報告書が提出されました。知事は、それを踏まえ、今月12日の平成30年第2回定例会の開会日に、所信表明の中で、「廃止に向けた動きを進めることといたします」と表明したところです。
今定例会では、この有識者会議の報告書が報告事項として、私の属する公営企業委員会に上程されており、その内容に関する質疑を行うこととなっていました。

以下、私の質疑内容を報告します。常任委員会の会議録は、どういうわけかいまだに完成が遅く、私の手元にある予定稿でアップします。大事な箇所はほぼこのままですが、しゃべり言葉で演説していますので、口に発したままではないことをご了解ください。

予定稿

(中山) わが党は、これまで再三にわたり、工業用水の存続、廃止の如何を問わず、今後の方針の明確化、そして、同じく、工業用水の存続、廃止の如何を問わず、老朽化した工業用水管路の防災対策の実施、加えて、万一、廃止する場合の鍍金、皮革加工などの工業用水を本来目的で使用している企業ユーザーや、トイレ洗浄水などの雑用水として使用している集合団地ユーザーへの丁寧な配慮、支援措置の検討を求めてきた。

今定例会では、有識者会議からの提言を受けた知事が所信表明で廃止方針を示されました。これを踏まえ、わが党は、先日の代表質問でユーザーに対する料金差額について有識者会議では10年程度としている支援期間について、実際に都が実施する支援期間を早急に示すとともに、充分な支援策を講じるべきと求め、財務局長からは、「関係各局と連携し、料金差額の支援期間を含め、きめ細かな支援策を検討していく」との答弁を得たところである。

有識者会議の報告書でも、185件の本来目的の企業ユーザーのうち、31件が5年以内の設備更新を予定しているとのことであり、これを前提とすれば「廃止」とする場合の都の意向表明を急がなければならない事情自体は明らかである。

また、当然、「関係各局」には真っ先に水道局が入る訳であるが、予算編成を司る財務局長の答弁を得てこれからの検討に当たれる意義は大きいと考える。

具体的な支援内容を巡る質疑に入る前に、廃止方針そのものが妥当なものであるのか否かの論議の第一歩として、周辺状況を確認しておきたい。

工業用水の使用開始時の創設費用や管路の維持や料金の低廉性の維持に係る費用、老朽化した管路の耐震化にかかる費用に掛かる国費の投入状況を確認したい。(Q1)

(水道局) 工業用水道事業において、これまで受けた国庫補助金の金額は、昭和35年度から平成17年度までの合計で、約117億円である。

 

(中山) 合計額だけ答弁いただいたが、内訳が大事である。また昭和30年代といえば、今とは物価もだいぶ違うので、その点を加味した数字を今後の審議ではご用意いただきたい。

こうした国費を得てもなぜ、赤字であるのか。また、なぜ、廃止せざるを得ないのか、将来需要見込みも踏まえ確認しておきたい。(Q 2)

A 2(水道局) 有識者委員会報告書によると、国庫補助金を活用した形で老朽化施設の更新費用としては2,328億円が必要と見込まれている。

この施設更新に国庫補助金を活用したとしても、約8倍という大幅な料金値上げが必要とされている。

さらに今後も工業用水道の需要の増加が見通せないことから、工業用水道事業を廃止すべきとされている。

 

(中山) 今後の耐震化に要する費用について、都が推定している金額の妥当性については、その根拠となっている工法の妥当性を含め、次の定例会で論議したい。

ただ、その前に、なぜ、耐震化に関し、18年度分からは国費の申請を行わなくなったのか、そして、「廃止」「存続」の別を問わない防災対策の実施を求めた第四回定例会のわが党の代表質問に対する答弁として、中島局長からあった答弁を今後履行する場合、再び国費の申請を再開することになるのか、国から裁可される見込みはあるのか、伺いたい。(Q 3)

A 3(水道局) 今後、工業用水道事業の廃止に向けた動きを進めることから、」現時点では安全対策にかかる国庫補助金の申請は考えていない。

 

(中山) 先程の答弁にあった国費の投入額を考えれば、国は、工業用水の全国最大のユーザーである東京都が、今後を工業用水の継続を図っていることを求めているようにも思える。

この点は、大事である。確かに、工業用水道を実施する都道府県で都だけが赤字であると聞くが、それでも、廃止するのは東京都だけである。

今回、都は、有識者会議の答申の時点や、都議会に廃止方針を説明する時点で国、経産省に説明を行ったと考えるが、その際の国の反応は如何であったのか、それに対し、都は今後、どう対処していくのか、確認しておきたい。(Q 4)

A 4(水道局) 国の省庁とは日ごろから連絡を取り合っているが、特に経済産業省は、工業用水道の指導監督庁であるため、連絡を取り合っている。

有識者委員会の答申について経済産業省に報告した際には、仮に東京都が事業を廃止する場合には、その判断が全国の自治体にも影響が及ぶと考えているため、検討状況を適時報告してもらいたいとの話があった。

また、利用者への影響もできる限り抑制してほしいとのことであった。

今後も経済産業省をはじめとする関係省庁と、適切に連絡を取り合っていく。

(中山) 以上、今回の都の廃止方針の表明に纏わる周辺状況を確認してきたわけであるが、都議会は今後、正式に廃止方針そのものの是非を、条例の廃止案として第三回定例会以降において議決することになる可能性が高いと考えるが、わが党としての正式な是非の態度表明はその論議の中で明らかにすることにしたい。なぜなら、支援の中身が明らかにならない限り、是非を論じられないからである。

そのことを申し上げた上で、「廃止」とする場合の支援の中身はまだ明らかになっていないが、質疑に移りたい。

まず、団地ユーザーに対する支援を取り上げる。

都の工業用水道事業は昭和39年から供給しているが、雑用水としての供給は施設の余剰能力を活用して、清掃工業等での洗浄用など、需要拡大策として昭和48年から開始。さらに昭和51年から集合住宅のトイレ用水を供給し、都が住宅の設置者などに対して、利用拡大を働きかけたとのことである。

工業用水道の利用者は、平成28年度末の時点で、539件。その中には、集合住宅の52件が含まれており、戸数にすると約35,000戸の都民が使用している。

工業用水道が廃止となると、集合住宅に供給しているトイレ用水も上水道に切り替えなければならない。

現在は、集合住宅に工業用水道用の各戸メータがないため、上水道を月に11立方メートル以上使用した場合に、工業用水道料金として月に125円を請求されている。一方、月の使用量が11立方メートル未満の場合には、請求されていない。

そこでまず、集合住宅で、工業用水道料金を請求している割合はどれくらいか伺う。(Q5)

A5(水道局)

工業用水を雑用水として供給している集合住宅は約35,000戸であり、工業用水道料金の請求は、上水道を月に11立方メートル以上使用した場合に行っている。

その請求実績については、平成28年度、年間で202,895件であり、1か月あたりでは、約17,000件である。

このため、工業用水道料金を請求している割合は、約半数となっている。

(中山) 今の答弁によると、現在、集合住宅で工業用水道料金を請求しているのは、全体の半分程度である。

しかし、工業用水道が廃止となり上水道に切替えた後は、トイレで使用した水量はすべてメータで計量され、料金徴収対象となり、水道料金の上昇が見込まれることから、居住者の家計への影響が懸念される。

その影響額は、局の試算によると、4人家庭における平均的な使用水量で、これまで2,751円だったものが3,468円へ上昇することが見込まれると聞いている。
(中山) こうした状況の中で、有識者委員会の提言では、集合住宅の居住者に対して、どのような支援策が必要とされているのか伺う。(Q6)

A6(水道局)

有識者委員会の提言では、支援策のひとつとして、料金差額補填の支援を実施すべきとされている。

この料金差額補填の期間は、工業用水道から上水道に切り替えるための切替期間と、切替完了後、料金増額の負担を軽減するため、段階的に料金を引き上げる激変緩和期間に分かれている。

まず、切替期間はすべての利用者が4年間とされており、激変緩和期間は、工業用水の利用者は切替期間を含めて10年程度の長期間が必要とされている。

これに対し、集合住宅を含む雑用水の利用者の激変緩和期間は、事業開始の経緯や使用実績等の点で工業用水の利用者と異なることから、工業用水利用者の概ね半分程度の一定期間とすべきとされている。

 

(中山) 上水道への切替期間中の4年間は現在の工業用水道料金と同等の額に据置き、その後の激変緩和期間とあわせた料金差額支援期間は、工業用水の利用者は10年程度とされているが、企業など他の雑用水利用者と同様に、集合住宅の居住者に対する激変緩和期間は、工業用水利用者の半分とのことである。

冒頭申し上げたように、集合住宅へのトイレ用水も含め、この雑用水の供給については、都がその利用拡大を働きかけたという経緯もある。

こうしたことも踏まえ、影響が懸念される集合住宅の居住者に対する十分な支援策も検討することを強く要望しておく。

あわせて、トイレに使用している雑用水を上水に変更しても、世帯人数の少ない高齢単独世帯などでは、水道の基本料金の中に納まってしまい、新たな経済的負担が発生しないケースも考えられるが、そうしたケースは全体のどのくらいを占めるのか、今後、正式に打ち出される支援内容を検討する際には、明らかにして頂くことを要望しておきたい。

また、現在の団地ユーザーの住まい、敷地内に配管されている工業用水管路の撤去費用は都が負担すべきであり、その旨は報告書にも記載されていると思うが、その費用見込みを含め、見解を求めたいところであるが、見込み額を把握できていないとのことであるので、次の質疑機会までの宿題としたい。

事業を廃止した場合の本来目的の企業ユーザー支援策については、有識者委員会の提言で、料金差額の支援や上水道への切替工事のほか、必要に応じて塩素除去装置、受水タンク設置などのメニューが挙げられている。

支援策の検討に当たっては、ユーザーのニーズをしっかり把握することが重要であることは言うまでもない。

特に、塩素除去装置や受水タンク設置などについては、個々のユーザーによってニーズが異なることが予想される。

このため、塩素除去装置や受水タンク設置などについてのニーズをどのように把握して、支援策を検討していくのか伺う。(Q7)

A7(水道局)

事業を廃止する場合に、利用者が必要とする支援を把握するためには、利用者ごとに意見や要望を丁寧に聞き取るとともに、敷地内の配管状況や上水道に切り替えた場合の影響などを十分に把握することが重要である。

そのため、当局ではこれまで、工業用水道を利用する企業を個別に訪問し、使用状況や上水道に切替えた場合の塩素除去装置の必要性などを聴き取るとともに、配管や設備の設置状況等を把握してきた。

今後、改めて利用者を個別に訪問し、切替えに伴う配管や必要となる設備の設置場所等について、技術的な視点から調査を行い、きめ細かく把握していく。

こうした取組を通じて、把握した利用者からの要望や、配管、設備等の状況も踏まえながら、各局と連携して支援策を検討していく。

(中山) 今後、個別に訪問した上でユーザーのニーズをしっかりと把握し、技術的な調査を行い、それに基づいたうえで支援策を検討するとのことである。

報告書にも記載があるとおり、185件のユーザーのうち、80%に当たる148件が中小企業である。なめし皮を生産する皮革加工も42件含まれており、生産コストの上昇を取引価格に反映しずらく、利益率、収支差額の上からも、経営体力が弱い企業が多いものと推察される。

企業経営の維持を前提とした丁寧な対応が必要である。各局との連携は何よりも大切なことなので、確実に取り組んでもらいたい。

私は、この工業用水道事業を議論する中で、もう一点注視していることがある。

そもそも都の工業用水道事業は、高度経済成長期に発生した深刻な地盤沈下対策として、地下水揚水規制に伴う代替水を供給するという行政施策として開始した。

その際に、それまで地下水を利用していたユーザーは、自ら投資して作った井戸を廃止し、今まで支払っていなかった工業用水道料金を支払うという負担を背負いながらも転換したという経緯がある。

こうした経緯から、この井戸から工業用水道に転換されたユーザーに対しても、丁寧な対応が必要と考えている。

まずは、井戸から工業用水道に転換されたユーザーは、現在どれくらいいるのか、有識者会議の報告書では、工業用水の供給開始以前に地下水を利用し、供給後、工業用水道に転換した利用者は、80件、うち大企業等が25件、中小企業が55件とのことであるが、残りの105件のユーザーを含め、現在も井戸を設置しているユーザーがどのくらいあるのか 把握の状況を伺う。(Q8)

A8(水道局)

不明である

(中山) 事業開始当初に、井戸から工業用水道に転換されたユーザーが、今でもユーザーの4割以上と多くいること、そして、全事業者の185件のうちで、井戸設置者がどのくらいなのかは不明とのことであった。

有識者委員会の提言では、井戸から工業用水道に転換されたユーザーへの支援については触れられていないが、この転換したユーザーに対しても、何らかの支援策を検討することが必要と考える。

ぜひ、検討していただきたい。また、検討するに当たっては、井戸の状況などを確認することが必要だと考えている。

先ほどの質疑で、今後上水道への切替えに当たり、現地を訪問し調査するとの答弁があった。

そのため、この現場訪問にあわせて、その企業に井戸があるかも確認すべきと思うが、どうか。(Q9)

A9(水道局)

水道局では今後、切替えに伴う配管や必要となる設備の設置場所等について、調査を行うこととしている。

地下水の利用に関しては、環境局などの所管であるが、この調査において、井戸の有無についても可能な範囲で確認し、得られた情報については関係各局と共有していく。
(中山) ここまで質疑をしてきたが、このように、雑用水ユーザーは、都の工業用水道需要拡大策に協力して導入し、工業用水道ユーザーの多くは、井戸から転換という経緯があることは、重要であることは言うまでもない。

工業用水道の廃止に向けた動きを進めるにあたっては、このような経緯を踏まえ、支援策の検討を含めて丁寧に進めるべきと考えるが、事業を所管する水道局長の認識を伺う。(Q10)

A10(水道局)

都の工業用水道事業は、昭和39年から地下水揚水規制に伴う代替水の供給という行政施策として給水を開始した。

これに伴い、当時、井戸水を利用していた多くの事業者が工業用水に転換した。

また、昭和50年代に入り、工場の都外移転等により工業用水道事業の経営状況が厳しくなる中、新たに洗浄用水や冷却用水、さらにはトイレ用水などの雑用水の供給拡大を図り、利用者を増加させてきた。

今回、工業用水道事業の廃止に向けた動きを進めるためには、本日ご議論いただいた経緯や行政施策としての側面等を十分踏まえ、井戸水からの転換や、集合住宅を含む雑用水の利用など多様な利用者1件1件の個別事情に、きめ細かく対応することが重要である。

このため今後、関係各局で緊密に連携し、様々な支援策を全庁的に検討するとともに、それぞれの利用者に丁寧に対応していく。

(中山) 工業用水については、地盤沈下を避けるためという緊迫した状況の中、国費も投じての打開策であった。井戸利用による地下水の使用を回避するために意図的に創設された工業用水を今後、廃止するとなれば、予算を握る財務局は当然のこと、地下水を司る環境局、産業支援を司る産業労働局のそれぞれの舞台での議論が必要である。

それぞれの委員会で精密に議論すればよく、特別な措置は屋上屋を重ねるものであり必要ないと考えるが、少なくても第三回定例会では、工業用水を直接司る水道局だけでなく、関係する他局でも同時に議論できる構えが必要であり、そのためのそれぞれの所管局への報告事項化も実現するよう、中島水道局長には、他局との連携をお願いしたい。それが、実現できないとなれば、屋上屋であれ、議会としての特別な措置の必要性を求める声も出てきかねないものと考える。

いずれにしても、先送りは簡単であるが、「廃止」「存続」の選択を行うとなれば、責任ある判断を下すための議論は容易なことではない。

これまで、工業用水道事業において、水道局は懸命に頑張ってきた。しかし、これを廃止するとなれば、企業存続に向けたユーザー支援は、水道局だけではなく、全庁挙げての対応が必要である。

都の廃止方針に関する議決を行う定例会では、都議会公明党として都民の信頼に応えられる議論を謹んで行わせて頂くことを表明し、本日の質疑を終える。

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